復職ガイダンス
本ガイダンスは企業の産業医が就労支援、主に復職時の職務適性の判断を行うときに利用するものです。基本的なデータは労災疾病研究補助金「身体疾患を有する労働者が円滑に復職できることを目的とした、科学的根拠に基づいた復職ガイダンスの策定に関する研究(160601)」(研究代表者:立石清一郎)により得られたデータをもとに作成されました。本ガイダンスの想定利用者は、普段は臨床医として活躍している嘱託産業医の医師です。 本ガイダンスには、産業医にとって標準的な考え方が記載されており、判断基準等が記載されているわけではありません。これには理由があります。まず、同一疾患であっても患者の治療方法は多様であり、副作用の出現率なども多様であることから、ある疾患で一定の対応方法をすれば症状悪化を網羅的に防止することは困難であることから個別のケースごとに判断していくことが必要だからです。また、業務における身体機能の要求レベルも大きく異なり、身体機能とのマッチングを検討するにもエビデンスと言えるほどの症例数を集めることは難しいからです。 それでも、判断の方法論は428の事例分析から明確になりました。復職させる際に産業医にとって最も重要なことは、ふたつの配慮(安全配慮、合理的配慮)の概念を理解し、企業にわかりやすく提示することです。安全配慮は事業者が労働者の安全を守るために検討する義務なので、企業にとって大変重要な内容です。一方で、合理的配慮は労働者の申し出により個別調整を実施することで主に環境整備を行うものです。それぞれ要求の出所が違うものとなっています。我が国における産業医の立ち位置は、『事業者と労働者のどちらからも独立していること(産業医の独立性)』です。安全配慮も合理的配慮も社会通念上、妥当な線で対応することが求められます。足りなすぎる配慮は労働者の健康を損ないますし、多すぎる配慮は労働者のモチベーションを下げるのみならず周囲の負担増大による不公平感が募ることになります。過不足のない配慮が労働者の安定した復職と長期就業につながりますのでその点を注意して判断するようにしてください。
“標準的な考え方”作成委員会 立石 清一郎 産業医科大学病院 両立支援科 診療科長 井上 俊介 産業医科大学病院 両立支援科 医師 森 晃爾 産業医科大学 産業生態科学研究所 教授 浜口 伝博 産業医科大学 産業衛生教授 宮本 俊明 産業医科大学 産業衛生教授 井手 宏 産業医科大学 非常勤講師 森口 次郎 京都工場保健会 業務執行理事 上原 正道 産業医科大学 非常勤講師 梶木 繁之 株式会社産業保健コンサルティングアルク 代表取締役 永田 昌子 産業医科大学 産業生態科学研究所 助教 永田 智久 産業医科大学 産業生態科学研究所 講師 伊藤 直人 産業医科大学 産業医実務研修センター 助教 簑原 里奈 産業医科大学 産業医実務研修センター 助教 長尾 保 産業医科大学 産業医実務研修センター 修練医 大橋 りえ 産業医科大学 産業医実務研修センター 修練医 廣里 治奈 産業医科大学 産業医実務研修センター 修練医 平岡 美佳 日本製鉄 産業医 平岡 晃 小松製作所 健康増進センタ 産業医 宋 裕姫 日産自動車健康保険組合 横浜地区健康推進センター 産業医 小笠原 隆将 三菱ふそうトラック・バス 株式会社産業医 古屋 佑子 国立がん研究センター がん対策情報センター 石川 浩二 三菱重工業(株) 大江西健康管理科 科部長 坂本 宣明 ヘルスデザイン株式会社 代表 五十嵐 侑 株式会社リコー 産業医 原田 有理沙 産業医科大学 産業生態科学研究所 非常勤助教 小田原 努 公益社団法人 鹿児島県労働基準協会 ヘルスサポートセンター鹿児島 所長
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